站トウ功の練習方法はとても多く、功法が違う練習もそれぞれ違う効果がある。無極站トウ功は数多い功法の中でも比較的簡単でありながら、しかし極めて重要なもののひとつである。
無極站トウ功を行うにあたり、先ず心を静かにしていく。心が静かになって始めて体が緩まり、四肢百骸（両手両足、体に有るたくさんの骨）はまるで無くなったように感じ、意識の中にしだいに空虚で限りがなくひっそりとした様子が広がり、ただ有るのはひとすじの気機（気のエネルギの転化の兆候）がその間に含まれているということだけである。
静かになるのを待ち、そして静が極まった時、気機は流動し始める（気のエネルギーが一定の程度の達した時自動的に転化する状態）。気動けば則ち太極が生じる。あらゆる気功功法は全て無極の中から生じたものである。
無極站トウ功のやり方
両足を肩幅と同じに開き、両膝はやや曲げて立つ。立身中正（体の中心をまっすぐにする）にし、全身を緩め両手先も緩めて体側に垂らす。
それから徐々に腹前に左手を外側にして置く（女性は右手が外側に重ねて置く）。舌先を上顎に付け、両目は軽く閉じて丹田を内視する。
姿勢が整いきちんと立てたら、先ず意念で頭のてっぺんの濁気を下ろすように思う。例えばひと固まりの雲が頭のてっぺんから足の裏まで下りてくるようなイメージをする。それからゆっくりと周囲に散開させると同時に、降りて行く濁気と共に体も徐々に緩めさせる。
全身がゆるまったら意念は祖竅（眉と眉の間）に移し、目を閉じた後の内視線と一緒に丹田まで下ろす。この時、眼・耳・口・鼻の、見る・聞く・吸う吐くという自然な働きは全て体内に向け、ただ意識で丹田を見て想い、丹田の細微な変化を聞いて心静かに気を練るのである。これが四門（眼、耳、口、鼻）を封じ込めると言うことであり、また「鎖心猿、繋意馬」（心で猿に鎖をかけ、意識で馬を縛りつける）とも言われている。
内気が全身の毛穴に段々と浸透し、また自然界の外気と融合し一体になるのを感じたら、心身がうっとりと気持ちよく仙人のような心地よさが生じるようになる。これが入静状態である。意念は引き続き丹田を守り、静かにそのまま45分から1時間して収功をする。
収功をする時の両手は腹部にそっと置いて、へその縁に沿って時計回りと逆方向左上右下に（女性は時計回りに沿って右上左下）に撫でるように回転する。速度はゆっくりと均一に、同時に両手で撫でてまわしていく時の円は広げていくようにする。36回転する時の両手は、上は胸の所まで、下は下腹部まで丸くまわし広げて行く。36回転し終えたら逆回し右上左下時計方向に沿って（女性は時計方向と反対左上右下方向）回転し、両手の回転は段々小さくへその縁に向かって24回転していく。まわし終わったらへそに軽く両手を重ねて置き、そのまま静かに立ち尽くす。両手でお腹を撫でて丸くまわしていく時、意念はあたかもお腹の空洞部と両手が同時にまわっていくように動かして行く。長く練習すると内動の意味が次第に明らかになり、且つ外動の形と内動が徐々に一体になっていくようになる。このレベルで練功ができると、きっと満足な収功効果が得られるようになる。（※ここでの収功の説明は「転腹収功」を指している）
意念の動きと両手の動作が完全に静止するのを待ってから両目をゆっくり開く。両手の平を熱くなるまで擦って、両耳脇から頭頂部に向かい額を通り下顎まで、連続20回顔面マッサージをして終了する。
無極站トウ功を行う時、意と気をひとつにすることに重点を置く。気を丹田に沈め、意念も丹田に集中させ、丹田から意識によってゆっくり呼吸を導いて、意と気を合わせる。
丹田の位置は人体の中央に属し、陰陽五行学説に基づいた名称は”中央戊己土”と言われている。気功をする時の注意力は丹田に集中させる。それは種を地面に撒くとしだいに根が生え花が咲く結果と同じ意味を持つと考えている。従って練功をする時、意識で丹田を思い、目を閉じて丹田を内視し、耳は丹田の自由に収放する音を聞くようにしなければならない。長く丹田を守ると気血が生じ元気が増す。心神をひとつにさせてこそ初めて入静の練功効果に達することができるのである。
前人曰く”丹田をしっかり捕らえて気功をする、鼻と口から出すふたつの気の妙は限りがない”
馮志強著「陳式太極拳精選」の「無極站トウ功」より
訳 塩井多恵子
